2011年「泣く夜も何も無い夜も知る夜も ただそこにある月の清けさ」
素描をするとは、対象を客観的に観察し知っていく行為ですが、描き起こしていく過程に於いて画面上では自分を知ることが出来ます。
画面上のものが今の自分の全てということです。
上手に描けるということ以前に、見えていることと自分が捉えていることの間にズレが生じる場合があります。
一発で捉えられる境地の人も居ますし、誰でもその状態の時もありますが、目的としては素描することでそのズレを正していくことで知っていくことに意味があります。
ズレをなかなか直せない時は、出来ない自分に腹を立てたり苛立ったり、しょげたりする事もあります。
また思い込みなどがあると、そのズレにも気が付かない場合もあります。
良い気分で描いて、しばらく目を離して、或いはその後数枚描いてから見直してみたものが、全く描けてないことに気が付くといったやつです。
何で見えなかったの…?と不思議に思うものです。
画面上で立ち起こる現象は、生きる上で起こる出来事と同じです。
二十歳のころ、これは描いていれば悟れるなと思いましたが、やはり体を使って体験することで裏を取る必要はあるなと思い直しました。
無駄に裏を取りに行ってきた気もします。
実は裏を取ることはわざわざせずとも、答え合わせは自然と出来る。リラックスして描くということを楽しむ、三昧の境地にいれば
成るように成るだけ、ただここにあることを知っているという感覚を覚える経験をするのです。
二十歳(1990年)頃の素描
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